患者さんへ patients 手術麻酔のご案内
手術麻酔のご案内
麻酔科医と聞くと、皆さんが手術を受けるときに、「患者さんを眠らせる人」と思う方が大半かもしれません。しかし、麻酔がかかっている状態というのは、夜中にただ単に眠っているのとは全く違います。
手術では何かしら患者さんの身体にキズをつける処置がありますが、単に眠っているだけでは、キズをつけられた途端にびっくりして目が覚めてしまいます。全身麻酔では眠っていると同時に、痛みも感じなくなっていますので、手術を受けている最中に目が覚めてしまうということはありません。
また、痛みを感じなくさせるだけでなく、手術中に変動する循環動態(血圧 や心拍数 )、呼吸などの管理、合併症(高血圧、糖尿病、心臓の病気、喘息や肺気腫などの呼吸器の病気を始めとする様々なもの)を持っている患者さんに対して安全に麻酔をかけます。患者さんに危険(大出血や心停止)が起こった場合に、素早く治療を行うこと、目が覚めた後に痛みが最小限になるようにすることなど、患者さんが無意識でも快適に手術を受けられるように、麻酔科医が手術中の患者治療を受け持っています。
麻酔の種類
手術の際の麻酔法には、大きく分けて全身麻酔、局所麻酔があります。
全身麻酔
全身麻酔は患者さんが手術中に眠った状態にする方法です。通常は、まず静脈から麻酔薬を注入し眠ります。呼吸の確保のために気管内にチューブを入れます。
また手術時の出血等に備え静脈に点滴を留置して、そこから輸液・輸血を行います。特殊な薬物の投与が必要な場合は、首や胸、足の付け根等から心臓の近くまで、細い管を留置する場合があります。
手術の終了に際し、薬の投与を中止することで数分から十数分内に患者さんが覚醒し、十分に呼吸できることを確認した上で気管内チューブを抜去します。
局所麻酔
局所麻酔法は痛みの感知・伝達する末梢神経の機能を遮断する薬(局所麻酔薬)を用いて、痛み情報を脳への伝達を遮断する麻酔法です。局所麻酔法は局所麻酔薬を作用させる部位により、以下のように分類されます。
<硬膜外麻酔>
脊髄の外側にある硬膜外腔へ局所麻酔薬を注入します。この部分には脊髄から末梢に伸びる脊髄神経が通過するため、これらの神経伝達が局所麻酔薬により遮断され、痛覚や運動能力が遮断されます。全身麻酔あるいは脊髄くも膜下麻酔に併用して手術中、手術後の痛み止めとして使用されることがほとんどですが、無痛分娩など硬膜外麻酔単独で痛み止めを行うこともあります。
<脊髄クモ膜下麻酔>
脊髄という太い神経の入っている脊髄クモ膜下腔に局所麻酔薬を入れることによって下半身(下腹部、下肢、足)の痛みを取る麻酔法です。短時間手術の場合に使われます。
患者さんによっては痛みは感じないが、触った感じが残ることがあります。その感覚が不快に感じられることがあります。
<伝達麻酔>
神経周囲に麻酔薬を注射することで、痛みを感じる経路を局所麻酔薬を用いて遮断する方法です。
多くは手、足の手術で用いられ、主なものに腕神経叢ブロック(手)、大腿神経ブロック(足)、坐骨神経ブロック(足)などがあります。手術後の痛み止めとして用いるために全身麻酔に併用することが多いです。また超音波エコーを用いることで安全かつ確実に行えるよう配慮しています。
手術が終わったのちも数時間は麻酔が効いている場所のしびれが残ります。
これらの個々の麻酔法については手術の部位・方法によって麻酔科専門医が適切な麻酔法を選択し、手術中は当科の麻酔担当医が常にそばについてそれぞれの患者さんに最適な麻酔管理を行います。
周術期外来
診療実績
手術件数の推移
2016年は緊急手術も含めて8300例程度であった麻酔科管理症例数が、以降は年々増加傾向にあり、2019年には合計約8600例に達し、今後もさらなる増加が予想されます。
今後も安全な医療を提供して行きたいと思います。
2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | |
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総手術件数 | 8337 | 8313 | 8534 | 8687 | 7693 |
麻酔科管理件数 | 6676 | 6989 | 7093 | 7227 | 6361 |