2019年7月20日

術後の硬膜外麻酔とせん妄の関連について

2019年7月20日 抄読会 平川

Perioperative epidural use and risk of delirium in surgical patients : a secondary analysis of the PODCAST trial
Visides PE, Thompson A, Kunkler BS, et al
Anesth Analg 2019; 128: 944-952

【背景】
せん妄は大手術後の高齢患者の約20~50%に発症し、公衆衛生上の重大な問題である。硬膜外麻酔はせん妄の発症要因となる術後の疼痛や炎症、オピオイドの消費量を軽減させるため、せん妄の発症を低下させるのではないかと考えられた。そこで今回はPODCAST(The Prevention of Delirium and Complications Associated With Surgical Treatments Trial)というせん妄と術中ケタミンの使用による疼痛緩和の関連を調べた研究の二次解析を行い、術後の硬膜外麻酔とせん妄の関連について調査した。

【方法】
PODCASTの1360人の登録者のうち無作為化された672人から消化器外科・婦人科・泌尿器外科手術を抽出し、硬膜外麻酔を使用した群120人と使用しなかった群143人に分け、それぞれにおいて年齢、性別、人種、バーセル指数や抑うつスコア、合併症などの項目、せん妄、疼痛、オピオイドの使用量について比較した。せん妄の評価は、術前のベースライン、PACU(Postanethesia Care Unit)に到着して2時間後、および術後3日間で1日2回(午前・午後)に行った。

【結果】
術後の硬膜外麻酔の使用とせん妄発症率の減少は有意に関連していなかった(オッズ比0.65 P=0.247)が、硬膜外麻酔を使用した群はせん妄のエピソードを経験する可能性が64%低かった。疼痛スコアは術後1、3日目の硬膜外麻酔を使用した群で有意に低く、オピオイド使用量は硬膜外麻酔を使用した群において術後1日目に有意に低かった。硬膜外麻酔は平均2.4日間使用された。

【考察】
硬膜外麻酔とせん妄に有意な関連はなかった。硬膜外麻酔にはオピオイドがよく使用され、脳脊髄液に移行し中枢神経系に薬力学的効果を及ぼす可能性がある。オピオイドは認知に影響する脳の領域に部分的に作用し、オピオイドによって引き起こされる大脳皮質でのアセチルコリンの変調が認知機能障害に関わる可能性がある。痛みにより認知機能は消耗し認識力の柔軟性を損なうため、硬膜外麻酔による術後痛の軽減はせん妄のエピソードを減らす可能性がある。

【結論】
周術期の硬膜外麻酔の使用でせん妄の発症率は有意には減少しなかったが、硬膜外麻酔でせん妄のエピソードを経験する確率は減少した。今回はPODCASTの二次解析であったため、術後せん妄と硬膜外麻酔・疼痛・オピオイド摂取等の関連について今後さらなる大規模な無作為化比較試験を行う必要がある。